優しい魔女は嘘をつく


トン、と耳のすぐ隣で、私がもたれた壁に手をつく音が聞こえた。





「全部、言えよ」





直後、正面から聞こえてくる堂本くんの声。



彼の右手は左耳の横にあって、彼との顔の距離はもう、あと数十センチで届きそうだった。





「あるんだろ、言いたいこととか聞きたいこととか。お前が抱えてること全部、俺にぶつけていい」



「……っ」



「だから……そういう顔、やめろよ」





落ち着いた口調。ビー玉みたいに綺麗で澄んだ瞳は、微かに揺れていた。




気づいたら、頭痛なんか忘れていて、頭の中もクリアになっていた。




大きな鼓動がかき消す、不規則な呼吸。体を流れる血液が、沸騰しそうなくらい熱かった。