優しい魔女は嘘をつく




どうして?




頭の中を駆け巡るのは、その一言だけだった。でも、それしか考えられなかった。



凍りついたように静止する体。そんな、わけない。……そんなわけがない。




「魔女」は本当に……彼なんだろうか。何かの間違いなんじゃないだろうか。




彼はずっと、私に、嘘をついていたんだろうか。彼は私を、騙していたんだろうか。




ねぇ、だったら……どうして……。






知らない間に足が動いていた。私は夢中で地面を蹴り、赤く染まっているリノリウムの上を走っていく。



堂本くん……なんで、なんで……?





前に、堂本くんがあることを口にしていたのを思い出す。





『……魔法、だっけ』