優しい魔女は嘘をつく



「初美は、そう思ってるの?」






何故か、そのときの咲良の問いに、私はすぐに答えられなかった。





「……分かんないよ」





代わりにそう答えると、咲良は何も言わずに黙って前を向いた。



それからすぐ、片付けを終えた堂本くんが倉庫から出てきた。



咲良はもういなかった。さっき先生に呼ばれて、教室に戻っていった。





「大丈夫か?」





堂本くんが私に聞いて、私は「うん、もう平気」とだけ答える。




私にしか分からない気持ちなのに、今の私には表現できない。



そんなもどかしさを抱え、私は堂本くんの一歩後ろを歩いていたのだった。