優しい魔女は嘘をつく


落ち着かせようと小さく深呼吸をする。堂本くんの歩調と、心臓の音が重なった。




ドク、ドク。

コツ、コツ。





だんだん意識が、その音に吸い込まれていくような気がした。





あれ、私……なんで、ここにいるんだっけ。

この後……なに、するんだっけ?




あぁ、そうだ。

踊るんだ……堂本くんと。




でも、どうやって、踊るんだっけ……?










やがてそれは、不安に変わり、じわじわと私の体を支配していく。




嘘……まさか、こんなときに忘れるなんて、さっきまで、あんなに……練習してたのに。



背筋が冷たくなって、鼓動だけが激しく動いていた。