優しい魔女は嘘をつく


「ありがとう、魔女さん!これで、私も舞踏会に行けるのね!」





魔女役の人に向かって、私は台詞を口にした。





「あぁ、そうだよ。でも、その魔法はずっと続くものじゃないのさ」



「え?」



「真夜中の十二時になれば、魔法は解けてしまう。だからちゃんと、時間を見ておくんだよ」



「ええ、分かったわ」






そして、証明が消えた。



私は後ろに下がって、幕の裏を移動し始める。もう一度、同じ場所に戻って待機していた。



すぐにまたステージに出ないといけないのに、緊張からか足が震えてしまう。




履き慣れていないヒールのせいで指先は痛いし、こんなに……大変だなんて。




そんな事を考えていたら、突然、ザワザワと体育館内が騒がしくなった。