そう言ってペンを私の前に出した堂本くん。私はにっこりと笑って、ペンと色紙を受け取ろうとしたけど。
スッ、と手が空を切る。
「あ」と二人の声が重なった。
──そっか……そうだった。
私も彼もすぐに、理解ができた。
「……ごめん」と、堂本くんが呟く。私はハッとして、すかさず口を開いた。
「大丈夫だよ。ほら、私が忘れてたんだからさ」
「……」
「もう、やだなぁ。書けないって分かってたのに」
そう言ってヘラヘラ笑っていたら、堂本くんが台本を下敷きにして紙を持ち、真剣な顔でペンを握った。
すぐ、その意味は分かった。



