私と堂本くんは、フェンスにもたれて一緒に腰を落とした。
台本を見ながら、私はさっきの体育館での劇の反省点をあげていく。
「さっきの感じが一番いいよ。あー、でも、まだ表情がかたいから、もうちょっと笑うこと。あと、ここは感情を込めて語りかけるような口調にしてね」
「……注文多すぎねぇか?」
「堂本くんがちゃんとやってないからだよ!」
堂本くんは、私の長いアドバイスに呆れていた。でも、別に怒ったりはしなかった。
堂本くんと席が近くになってから、もう一ヶ月くらいが経つ。今日は十月二十四日、火曜日。
最初の時に比べて、彼は少し丸くなったような気がする。それと、もう一つ気づいたことがあったっけ。
「堂本くん、字、上手だよね」
そう。堂本くんは、とにかく字が上手なのだ。



