優しい魔女は嘘をつく


触れられないと、分かっていても。……分かっていても、鼓動が速くなる。



その手を掴めないことが、どうしようもなく悔しかった。少し持ち上げた手に力を入れて、私は握り拳をつくる。




すり抜ける時に感じる、恐怖が、私にはまだあった。





実感するんだ。



今の私は、他の人とは違うってこと。誰にも触れられないってこと。″透明″、だってこと。




ひとりだ、ってこと。





後ろから強く風が吹き、体が前に倒れそうになった。立っている心地のしない足で踏ん張って、私は息を吐く。





「喜んで」──そう言う代わりに、私は笑顔で親指を立てた。





「合格!」



「……なんだよ、合格って」