優しい魔女は嘘をつく


そして、たどり着いたのは屋上。




堂本くんの後に続いて、屋上に出る。ヒュオン、と耳元で風が鳴った。




時刻は五時前、くらいだろうか。





山の奥には薄い桃色の空。日は沈みかけて、月が白く光っていた。



私は、寒くて仕方がなかった。あぁ、こうなる前に、厚着をしておけば……。



そんなことを考えていたら、堂本くんが急に私のほうに振り返った。




「……あのさ」





「うん?」と聞き返すと、堂本くんは視線を落として頭をかいた。



それは彼の、照れているときの癖だった。




なにを言うんだろう、とドキドキしていたら、堂本くんが意外なことを口にした。





「……シンデレラ役、してほしいんだけど」