昨日から今日にかけて、龍一郎に何があったのかは、災厄の箱たる鈴木さんにも分からない。

彼の人外の能力を以ってしても看破できないような何かが、龍一郎の身に起こったのかもしれない。

「すず」

鈴木さんは、すずのか細い肩にポンと手を置く。

「貴女は、ワタクシよりも龍一郎の身近にいる教師なのです。教師とは、迷える教え子を導くのが役目…もし龍一郎が苦悩し、迷っているのなら、貴女が力になってあげるのです、ハイ」

「私が…?」

すずは不安そうな表情を見せる。

教師といっても、彼女はまだ教育実習生だ。

生徒達の前では先生の顔で、精一杯虚勢を張ってはいるものの、まだ分からない事の方が多い。

まだ教壇に立つ度に、足が震える事もあるのだ。

そんな自分が、何か大変な事態に陥っているかもしれない龍一郎を導く…?