天神学園の奇妙な案件

「そういえば龍一郎」

食べる手を止めて、ノエルが言う。

「今日学校で、雷声使ったんだって？」

「ん？」

口一杯に頬張ったまま、龍一郎は顔を上げる。

「いつの間に雷声なんて…父さん教えた事ないのに、どうやって？」

「ん？あー…えーと…」

まさか未来の記憶があるから、などとは言えない。

返答に窮する龍一郎。

「ともかく、まだ龍一郎は基礎の体作りも出来ていないんだから…あの技は、横隔膜を酷使する。体が出来ていないお前が無理矢理使ったら、自身も相手も大怪我をする事に…」

「まぁまぁ、ノエル」

拓斗がノエルに言う。

学生時代、生徒会に所属していたノエルは生真面目だ。

基礎から順に、拳法も教える。

対して拓斗は、今は亡き親友・丹下 龍太郎の破天荒ぶりをよく覚えている。

多少の無謀さも、強くなる為には必要だと知っている。

その為に、龍一郎の無茶にも寛容だ。