階段を下りて、靴箱に向かう途中。

「あ」

蒲公英は、中庭でティーダと組み手をする龍一郎の姿を見つける。

今朝の蛮との決闘で、修行不足を痛感したのだろうか。

ユースティティアを抜剣したティーダと、白熱した模擬戦。

蒲公英にしてみれば、本気で喧嘩しているのかと思えるが、当人同士は結構安全装置を効かせたやり取りらしい。

時折笑みすら浮かべて、白刃を躱したり斬りつけたり。

あんな危ない事の、何が楽しいのだろう。

やたら戦いたがる兄は、もしかしたら精神的にヤバい人なのかと思っていたが、どうやら同年代の男の子はみんなそうらしい。

「兄ちゃん」

龍一郎に声をかける蒲公英。

「お?」

龍一郎は足を止める。

「今夜ビーフシチューだから。早く帰って来てよ。遅いようなら、みんなで全部食べちゃうから」

「おー、わかった」

笑みを浮かべる龍一郎…の頭に、勢い余ってサクッと振り下ろされるユースティティア。

「うわ!悪い龍一郎!」

「だ、大丈夫大丈夫…」

龍一郎、顔面血塗れ。