そもそも、蛮を諦めさせる為の芝居だったのだ。

それを、これ以上龍一郎に痛い思いをさせる訳にはいかない。

止めに入ろうとするルナ。

しかしそれより早く。

「いよいしょおっ!」

龍一郎は片手で身体を支えながら真上に蹴り上げる逆立ち蹴り、穿弓腿(せんきゅうたい)を繰り出す!

顎を蹴り上げられ、転倒する蛮。

「ああ…お前強ぇよ。んで、俺弱ぇわ…ほんっと…こんな弱かったのな、俺」

首をゴキゴキ鳴らし、己の未熟さを痛感する。

「でもな、こういう勝負事でルナを奪おうとかすんの、感心しねぇんだわ。猫の子じゃあるまいしさ…俺に勝ったから、はいどーぞ、って渡せねぇだろ」

「……」

口元の血を拭いながら、蛮は立ち上がる。

「ルナの気持ちを考えて、僕に退けって事か?」

「ホントはな、それが一番いい。気持ちの押し付けなんてよくねぇからよ。でも、それじゃあお前の収まりがつかないだろ?だから」

龍一郎は構えた。

「とことんまで俺が付き合ってやる」