天神学園の奇妙な案件

「速い…!」

ティーダの背後で、ルカが目を丸くした。

「人の身で、よくぞここまで…勇者とは、本当にとんでもない人種なんですね…」

「…くそ…!」

跪き、呼吸を乱す。

風の女王召喚だぞ?

禿鷲をも驚愕させる、ティーダ最速の技だぞ?

掠めもしないなんて! 

「ティーダさんも龍一郎さんも、思い違いをしている。僕は、速さで躱しているんじゃない」

両手を後ろに組み、したり顔でルカは言う。

「僕は『技が発動し終わった時間』に移動しているに過ぎないんです。発動し終わった時間に、その技の影響はなく、つまり僕には技は当たらない。当然でしょう?その時間には、どんな凄い技も『存在しない』んだから」

それこそが、時間操作による回避。

ルカは、技のない時間に移動しているのだ。