龍一郎のアドバイスに頷き、今度こそ決勝の舞台に向かうティーダ。

通路を歩くティーダは。

「!?」

その手を、蒲公英に摑まれる。

「蒲公英?」

「……」

手を握ったまま、俯く蒲公英。

負ければお終い。

負ければ、今度こそ本当にルカを止められる者はいなくなる。

ルナや蛮が、代わりに挑むとは言っていたが、ティーダや龍一郎が勝てない相手なら、実力伯仲のルナでも勝てない公算は大きい。

…負けた者の末路は、先程の兄を見ていれば分かる。

絶望に打ちひしがれ、崩れ落ち、慟哭するのだろう。

兄に続きティーダにまで、そんな姿は見せてほしくないし、見たくない。

だから。

「!!」

蒲公英はティーダを引き寄せ、キスをする。

「魔力…消耗してるって言ってたから…チューしたら、魔力が増えるって言ってたから…」

思えば、子供じみた発想。

キスひとつで、魔力が増えたり減ったりする筈がない。

それでも。

「サンキュ蒲公英」

微笑みを浮かべ、ティーダは蒲公英の手を優しく解いた。

「魔力回復した。こりゃ勝ったわ」