すずには、龍一郎の心中が理解できる。

だから、かける言葉が見当たらない。

…終わったのだ。

全ては終わり。

龍一郎とすずの、今日までの必死の試みは水泡に帰した。

龍一郎が優勝すれば、ルカの歴史改変は帳消しにさせる。

しかしルカが優勝すれば、彼のやりたいようにして構わない。

そういう約束だ。

賭けは終わった。

ルカの勝ちだ。

これから天神の歴史は、ルカに掌握される。

唯一歴史を守れる筈のチャンスを、龍一郎は守り切れなかったのだ。

それは同時に、龍一郎の娘ベルも、生まれてこないかもしれない事を意味した。