『そこでだ』

禿鷲は記憶を呼び起こす。

『まだ貴様の内に封じられる前に、古い書物か何かで見た技を思い出した。聴勁(ちょうけい)というのがある。太極拳の一手だそうだ。俺には時凍えがあるので、こんなもの習得する必要はないと知識程度に留めておいたが…貴様には多少役に立つかもしれん』

肌から伝わる微細な振動で、相手の動きを先読みする技。

鋭敏な、研ぎ澄まされた神経を持つ事で、初めて使いこなせる技だ。

これと時凍えを併用する事で、ルカの時間操作に対抗する。

魔術という人智を超えた力に、鍛え抜かれた肉体だけで勝負するのだ。

「すげぇ技知ってんじゃねぇか禿鷲!恩に着るぜ!」

『貴様に着せる恩などないわ。忌々しい』

自分が天神学園の人間の手助けをする事になろうとは。

言っておいて恥ずかしくなったのか、禿鷲はそれきり黙り込む。