学園長ヴラド・ツェペリは、酷く陰鬱なオーラを纏っていた。

爽やかな朝を台無しの雰囲気。

いつも重苦しく響くブーツの音が、今日はまた一段と鈍く聞こえる。

「失礼ながら学園長」

秘書にして妻の花龍が言う。

「そのような顔をされていては、生徒達にも示しがつきません。もう少しシャキッとして下さい」

「喧しい」

学園長室の椅子に座り、両手を机の上で合わせ、その手の上に額を当てて俯くヴラド。

「ルナめ…この父に叛旗を翻すか…おのれ、未熟者の吸血鬼の分際で…父の前で、どこの馬の骨とも知れぬ小僧と…しかも怨敵ヴァンパイアハンターの小僧と口付けを交わすとは…おのれ…おのれルナめ…おのれ…父さん悲しいぞ…」

後半本音駄々洩れ。

「貴方っ」

業を煮やしたのか、いつもの家での呼び方でヴラドを窘める花龍。

ヴラドが少しビクッとなる。

「ルナだって年頃なんです。恋もすれば、彼氏も出来ます。大きな器で受け止めてあげて下さい」

「ルナは俺の決めた家柄のいい吸血鬼…真祖爵位級の男と一緒にすると生まれた時から決めているのだ。方針変更は有り得ん」

言い出したら聞かないお父様。