その日の夜。

「お?」

龍娘流中国拳法の稽古をしていた龍一郎のスマホが着信した。

電話の主は、ヴラド・ツェペリ。

「…魔王からの呼び出しか…?」

胡乱な目をしながら、龍一郎は渋々電話に出る。

「おぅ…何だよ学園長…俺は何もしてねぇぞ?」

『そんな事は訊いていない』

電話の向こうのヴラドは、やや意気消沈気味だった。

『物は試しに訊ねてみるが、貴様ルナの居場所は知っているか。知っているなら今すぐ吐け全て吐け。隠すと命はないものと思え』

完全に脅迫だ、警察に届け出れば事件として立件できる。

「どした、ルナに何かあったのか?」

『……』

ヴラドは珍しく溜息をついた。

『ルナが帰ってこないのだ…使い魔の蝙蝠を方々に飛ばして探しているが、見つからんのだ…』