吐き気を催すほどの、『人間至上主義』。

それがバルトメロイの正体だった。

穏やかな顔をした老人の裏の顔は、人外に対する差別と偏見に満ちた歪んだ性格。

「バルトメロイ会長!」

蛮が声を上げる。

が。

「誰かな、君は」

バルトメロイは惚けた顔をして、蛮を見た。

まるで初対面の人間を見る目だ。

「化け物どもとつるんで絆されて日和るヴァンパイアハンターなど、私の知り合いにはいないのだが?」

「…っ…」

俯き、唇を噛む蛮。

既に嘗ての弟子は、バルトメロイにとっては顔見知りですら非ずという事か。

「俯いたら駄目、蛮…」

彼の隣で、ルナが言った。

「寧ろ運が良かったと思いなさい…貴方はあんな偏見の塊の手から離れて、天神学園に来れてよかったと…」

「ルナ…」

ルナの横顔を見る蛮。

「君は…そうか、ヴラド・ツェペリの娘だね?」

バルトメロイは微笑んだ。

表情筋だけで笑った顔。

目が笑っていないその表情の、何と不気味な事か。

「君の父上にはお世話になっている。生きたまま何回も何十回も責め苦を与えてあげよう。父上が、血涙を流して悔しがるようにね」