「龍一郎っ?」

慌てて振り向き、駆け寄るすず。

「しまったの、フィンの一撃なの…!」

対象を人差し指で指差し呪う事で、病を与えるルーン魔術『ガンド撃ち』。

そのガンドの秘奥、心停止を起こすほどの病を与える呪いを、『フィンの一撃』と呼ぶ。

バルトメロイは、やはり気づいていたのだ。

すず達が尾行していた事を。

そして、魔術に耐性のない龍一郎を的確に狙った。

先述した通りの、心停止を起こすほどの呪いだ。

食らえば即死確定。

しかし。

『心配するな、女』

すずにも聞こえるように、テレパシーのような能力で、禿鷲が語り掛ける。

『龍一郎は魔術耐性はないだろうが、俺は臥龍の血族だからな…対妖術・魔術に関してはトップクラスだ。魔法陣及び瞬間契約を用いた大魔術すら完全に無効化してしまい、事実上現代の魔術で傷付ける事は不可能なレベルの耐性を有している。こんな呪いなぞ…』

龍一郎の胸から、ドロリと黒い粘着質のものが流れ出し、消えてなくなる。

「そうだったの…貴方はあのシオン一味を1人で相手取った男だったの…」

すずが、少し安心したような表情を見せる。