一定の距離を保ちながら、すずは尾行を続ける。

生まれついての能力として、気配遮断は得意だ。

超一流の暗殺者が舌を巻くレベルの、ほぼゼロにまで気配を消す事かできる。

だというのに。

「どういう事なの…?」

すずはいつまで経っても、全力疾走をやめる事が出来なかった。

見失ってしまいそうになるからだ。

バルトメロイは杖をついているくらいだ。

歩く速度は決して速くないし、普通の老人と然して変わらない。

だというのに、全力疾走するすずが撒かれ、置いて行かれそうになる。

これは彼の魔術なのか。

魔術の中には、視界に入っていながら視認できなくなる、認識阻害の魔術というものもあるらしい。

そういった魔術を行使しているのだろうか。