お母さんったら、
本当に人使いが荒いんだから…。



小さなため息を吐いて、
インターホンに手を伸ばす。







ーピンポーンー


「はーい。」





チャイムの音と同時に、
家の中から声が聞こえた。




ーガチャッー




「あ‼︎こんにちは。
はじめまして、桜井です。
今日この階の305に引っ越して来ました。
あの、これ少しですが…。」


「あら、わざわざありがとうございます。
はじめまして、池下です。
何か困った事があったら
いつでも言って下さいね。」



中から出て来たのは、
40代くらいの綺麗な女の人だった。
優しい笑顔に少しだけホッとする。


「はい。これから
よろしくお願いします。
では、また。」


「はい。また♪」



ーガチャンー



お菓子を手渡して、
1軒目の挨拶を終えた。





「ふぅ…。」




ーピンポーンー



私は小さな息を吐くと、
2軒目の家のインターホンを鳴らした。