王の気まぐれで釣り上がる税金。
飢餓による大量死。横暴な王兵たち。


一農家のひとりっ子だったボクは、目の前で母が王兵に犯されるのを見ていた。

王兵にとって、そばで泣きじゃくるズボンを履いた短髪の子供は景色でしかなかったのだろう。


ことが終わったあと、ボクは母を殺した王兵を追って、雨の夜道を走った。



「……こちらで、アーノルド様がお眠りになっておられます」



王兵はある厳重な扉の前で足を止めた。



「……中に人は?」

「いません。アーノルド様だけです」

「しばらく二人きりにしてくれないか。最期の別れを……したい」

「……承知しました」



扉を開き、暗闇の中を進む。


すると一本のろうそくの炎に浮かび上がるようにして、お気に入りのベッドの上で革命家は眠っていた。



その額に、風穴を開けて。



石で固められた灰色の部屋。
彼の隣にひざまずき、目をつぶった。



「……これはきみに対する懺悔だ。聞いてくれるか、アーノルド」



もはや彼に口はない。


彼と出会ってからの出来事が、走馬灯となってボクの頭の中を駆け巡った。



「……初めて会った日のこと、覚えているか。ボクが王兵に殺されかけたときのことだ」



自分を尾行する子供の影を察し、路地裏にボクを引きずり込んだ王兵。

銀色に輝く剣が、雨に濡れて光っていた。