岩城は、とても涼やかな目元をした、極めて端正な容貌の持ち主だった。

メガネを外しただけで、ここまで変わってしまうそのあり得なさに、絵里花は愕然として視線を動かせない。見つめているだけで、本当に吸い込まれてしまいそうな気持ちになる。


目の悪い岩城も、さすがに絵里花の視線に気づいたらしく、ぼんやりした視界の中にいる絵里花を見返した。


「……なんだ?何か用でも?」


声をかけられて、絵里花は我に返った。


「いいえ、何も……」


とっさに首を横に振って、収蔵庫を後にする。

エレベーターに乗ってボタンを押しても、ビックリした心臓がまだ激しく鼓動を打っている。


男の人を見てこんなにドキドキしたのは、絵里花が生まれて初めてのことだった。


……これが、絵里花にとって、運命の恋のはじまりだった……。





   [ 完 ] 2017.10.25






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※ 明日より、本編「彼がメガネを外したら…。」の更新を再開します!