電車を降りて、歩くこと10分。崇のマンションが近づいてくると、絵里花はいささか緊張してきた。


なんと言って崇に切り出すべきか。どんな態度で崇に接するべきか。そもそも、自分はそこに乗り込んで何をしたいと思っているのか……。

悶々と考える間にも、マンションに到着してしまった。崇の部屋の窓からは、暖かい光が漏れている。

幸い絵里花の手元には、まだ崇の部屋の鍵があった。
絵里花は頭の中を空っぽにして、その部屋に入ることだけを決断した。その後のことは、崇の出方次第だと思った。


崇の部屋の玄関のチャイムを押すと、返事も待たずに鍵を開けた。そして、勢いに乗って、ドアをバン!と思い切り開け放った。


「……!?」


そこに見えたのは、思いもよらないことに目を見張っている崇。……と、今日子の姿。

ドアの前に仁王立ちする絵里花を見て、二人ともあからさまに怪訝そうな表情になる。


「絵里花…?!何しに来たんだ?」


「……え?何しに……って」


呆れたような崇の言い方を聞いて、絵里花は言葉を詰まらせた。