重苦しい時間が、二人の間を流れていく。『今日子のことは、ただの気の迷い』崇がそう言いだしてくれるのを、絵里花はひたすらに待っていた。

しばらく沈黙した後、おもむろに崇は口を開いた。


「絵里花は美人だし、気立ても良いし、賢いし。非の付けどころのない素晴らしい人だよ。そんな人と付き合えて、俺は幸せだった……」


崇の言いたいことがよく分からなくて、絵里花はじっと崇を見つめ続ける。


「……俺にはもったいなさすぎる」


その一言を告げると、崇は立ち上がった。


――……えっ?!どういうこと?……どういうこと!?


疑問だらけの絵里花。でも、それを崇に問いただすことは出来ず、座ったまま見上げるだけ。


そんな絵里花に崇は薄く微笑みかけると、思い切ったように視線を逸らして、歩き出した。

絵里花はそれを追いかけることもできず、公園のベンチに取り残され、遠くなっていく崇の背中を見つめるばかりだった。