「それで、元旦那の元に戻ると言っていた。あの人は、私がいないと
駄目になってしまう。
何にも、できない人だけど・・・
ずっと、ずっと、別れてからも私を愛してくれていた。
だから・・・・・・芸能界なんて・・・違う世界の人とは、やっていく自信が無い。
好きだけど、これ以上、先を考えると辛くなってしまう。
だから別れたい。」

辛かった。悔しくて涙が止まらない!
なんで!ずっと一緒にいたかったのに。

「俺は止めたよ!何度も説得した。また同じ生活になるぞ。
後悔を絶対するから辞めろ!とね。でも駄目だった。やっぱり元旦那が忘れなかったみたい。離婚してからも旦那の事をずっと思っていた。
離婚してからずっと旦那を忘れる為に、旦那を避けてきた。
順子、若い時、両親が亡くなり、全て一人でやってきた。
誰も頼る人が、いなくてそれで一番つらい時に、出会ったのが、
あの亭主だった。旦那も全てわかった上で、離婚に同意した。
けして嫌やで、別れたわけではない。
戻ると、どうなるか?わかっている?でもあの時、あの人に、
出会って無ければ、今の私はいない。ただ家族が、欲しかった。
また芸能界の華やかな世界を違って、素朴に生活したかった。」

悔しい涙が、溢れるほど出てくる。止まらない。
なんか死にたい気分だ!でも死ぬ勇気も無いし、死ぬ気力も無い。
今日は浴びるほど飲みたい。家に帰ると順子との生活を
思い出してしまう。帰りたくない。
なんの為に今まで頑張ってきたのか?わからなくなってきた。
マスターは最後に言った。

「絶対、死ぬなよ!この苦を乗り越えろ!
これで、もっと売れて、見返せ!」

でもそんな気になれなかった。
マスターの言う事を聞けなくなっている、自分がいる。
あんなに好きになれる女性は、もう出てこないだろうと思った。