「そんな・・・・なんで・・・・・なんでなんだよ!まだ近くにいるかも・・・」

慌てて探しに出た。順子の行きそうな所は全て探した。

「何処へ行った!」

ふと、おもいついたのは、順子が店をやっていた時に、店を閉めてから
よく通っていた店を思い出した。
店を辞めてから全然、行ってなかった。
思い出したように向かった。
店のマスターは、看板を閉めかけていた。

「マスター!」

俺の声を聞き、俺に気がついた。

「おう!」

「順子、来てない?」

マスターは、何かあったと気がつき、看板を入れながら

「まあ、中に入れや!」

マスターは、走り回って、汗びっしょりの俺におしぼりを渡した。
瓶ビールを出して

「これでも呑んでいて、今、店をかたづけるから」
マスターは凄く冷静だった。何か知っている雰囲気を感じた。
店をかたづけてコップにビールを注ぎ、一言、言った。

「あきらめな!」

「え?」いきなりの一言が、ボディブローに効いた。

「順子、昨日もここへ、来ていた。」

「え?順子、何か、言っていた?」

マスターは煙草に火をつけて吹かしながら

「子供できていたの?知っていたか?」

またショックだった。もうKO負けの状態である。

「え?子供?」

「そう、お前の子だよ。」

「俺の子?」

「あいつ、なんか子供できてから、凄く悩んでいたみたい。
よく俺に言っていたな。せっかく、売れてきているのに
私は、バツ1で、籍に入っていなくて子供できたなんて・・・・
売れるのを邪魔しているのではないかと・・・・
負担かけたくないと言っていた。」

「邪魔?」

「実は、お前が営業行っている間に、その子を昨日おろして、ここに来た。
凄く悩んだ結果だそうだ。それで、誰にも相談できなくて、
俺のところに来た。」

何も言えなかった。