「お前の仕事は、何をやっている?:」

「え・・・・・・・芸人です」

「あ~ どうりで見たことあると思った。」

こんな時は、見た事が、無くても見た事あると必ず言う。
まるで警察で、調書を取られている犯罪者の気分だ!
不利な立場で、いろいろ尋問されている。順子は殴られた顔を手で抑えて泣いている。
修羅場である。先の状態は、見えない。どうなるのだろ?
この場を何とか乗り切りたい。

「お前、今日は仕事か?」

「はい・・・・」

「それじゃ仕事に行け!2,3日たったら連絡する。」

やっと開放された。テロリストから開放され、報道陣が
待ちかまえるところに出る気持ちが、わかった。でも外には、報道陣は、いない。
朝から、物凄くテンションが、下がった。仕事に行く気分じゃない。
それより順子の事が気にかかる。どうなっているのか?

「こんな状態でも仕事にいかないといけない因果な商売だな」

芸人は、親の死に目も、見れ無い。
何人かの先輩芸人も嫁の親が、死んだ時に、親戚連中から非難轟々に、
嫌味を言われたそうだ。

「親が死んでいるのに、仕事を選ぶのか?」

「親より仕事が大切なのか?」

それでも待っているお客の為に、仕事をしないといけない。
泣きたいのに、笑わせないといけない。芸人の宿命だ!