けして酒が、好きなのでは無い。雰囲気が好きだった。
周りからちやほやされる気分はいい。
でも中には、全く芸能界に無知なホステスもいた。それが順子だった。
スナック順子のママで年は32歳。
離婚して、子供がいなくて一人ものだった。25歳と32歳。
年の差が7歳年上。
大人の魅力ある女性だった。

「社長、芸人さんに、チップぐらい出さないと」

いつも芸をやるとチップ出さない社長も無理やり出させた。
順子は、伸一の事を好意的だった。
順子の人生から見たら伸が魅力的だった。
芸人と言う名前に憧れを持っていた。
いつも笑わせ楽しませてくれた。
辛いことを一時的でも忘れさせてくれるがん患者に与えるモルヒネみたいなものだ。
そのうち自然と付き合うようになっていった。
だが、1ヶ月たっても、彼女の家には、一度も家に入れてくれた事はなかった。

「なんで家にいれてくれない?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

いつもなんだかんだで、ごまかされた。
つきあっていくうちに、彼女は、年の差を凄く感じていたようだ。
半年たって彼女の家に、やっと通えるようになった。
仕事を終え、飲みに行くのは、必ず順子の店だった。
店が閉店になるまで残り、順子の家に帰っていた。
自宅に帰らず順子の部屋に帰るような、半同棲生活だった。
楽しかった。今まで、金で着いてきた、女性とは全く違う。
順子の家から、仕事に行き、そして店に行き、順子の部屋に戻る
生活だった。