異常な愛を受けとって

次に彼と会ったのは、図書館だった。
喫茶店で会った、1週間後。
大きい図書館で、高い本棚が2階にまで大量にあった。
私は、趣味で図書館に通っていた。
いろんな本を手に取り、細かなところまで想像しながら読むのが好きだった。
本棚の上の方に気になるタイトルの本を見つけた。
でも、手を伸ばしても届かない距離。
どうしようかと悩んでいると右上から聞き覚えのある声がした。
「偶然ですね、僕もこの本を読もうとしてたんですよ。やっぱり、気が合いますね。」
いきなり、話しかけてきたのは喫茶店で会った、あの人。
台詞がナンパ染みている。
「あ、喫茶店の。こんな所で会うとは思っていませんでしたよ。」
と、私が返すと、
「これも何かの縁です。一緒にAngraecumに行きませんか?」
と、言った。
「あ、そう言えば前の週は行けてませんでした。そうですね、行きましょう。」
そして、私達はAngraecumまで歩いて行く事になった。
図書館からAngraecumまで歩いて約2キロ。
「お名前聞いてもいいですか?僕の名前は、須賀 優汰(すが ゆうた)です。」
「かっこいいお名前ですね。私は、紅葉 優貴(もみじ ゆうき)っていいます。」
「2人とも、『優』がついてますね。」
と、須川さんが言った。
「本当だ、こんな所まで奇遇なんですね。」
そう言って顔を見合わせ、笑い合った。
名前を言い終えると、
「自己紹介しませんか?僕たち、お互い何も知らないですし。」
「見ず知らずの相手ですよ?それに、お互い知らない方が良い事だってありますし。」
私は微笑みながら答えた。
「僕は貴女の事、知りたいですよ。気持ち悪いかもしれませんが知らない方が良い事まで知りたいです。」
真剣な顔で言う、須賀さん。
「須賀さん、それは好きだ、と言っているんですか?」
冗談交じりに言った。
「そうです。本が好きな貴女なら、こんな遠回しの台詞くらい読み取ってくれると思っていましたよ。」
いつもの爽やかな顔が少し赤くなった。
『そうです』と言われるなんて思ってもいなかった。
「先ほどの図書館内でも雑なナンパをされたようで、心の中で笑ってしまいました。」
「ナンパなど無縁でしてね。素敵な笑顔ですね。」
と、須賀さんは照れながら言った。
「だから、ナンパの台詞が雑なんですよ。」
と、私は笑いながら言った。
「須賀さんはおいくつなんですか?」
「おいくつに見えますか?」
ニコニコしながら質問を質問で返された。
「18歳くらいに見えます。」
「僕は、大学生です。20歳ですよ。」
今日の須賀さんのファッションは、黒のジーンズに赤のパーカーでシンプルなのにとてもお洒落に見え、20歳より若く感じる。
「学校では、さぞかしモテているのでしょう。羨ましいかぎりです。」
皮肉っぽく、頬を膨らませて言う。
「そんな事もないですよ。普段からこうなので、絡みづらいですし喋らなければマシだと思われてますよ。」
と、爽やかな笑顔で返された。
「爽やかでイケメンで高身長の男性は女子の理想ですからそんな事思われていませんよ。運動できるなら尚良いですが、須賀さんは運動しているように見えません。」
「僕、体育教師を目指しているんですが。運動しているように見えませんか?」
控えめな顔をしてたずねてきた。
「いや、あの、しているように見えなくもないです。」
「もう、手遅れですよ。」
須賀さんが無邪気に笑った。
「すみません。私も教師を目指しているんです。科目は国語ですが教師という目標は同じですね。」
「僕たち、とても気が合いますね。あの、本当に、良ければなんですが、僕とお付き合いして頂けませんか?」
だんだんと頬がピンク色になっていった。
「まだ、知らない須賀さんが沢山あります。お友達からでお願いします。」
失礼にあたらないくらいの角度で礼をした。
「それでも、ありがとうございます。敬語も使わないでくれていいですよ?」
「それはお互い様です。須賀さん、自己紹介しませんか?」
「貴女から自己紹介のお誘いがくるとは思っていませんでした。」
嬉しそうにふにゃふにゃな顔をした。
「貴女ってやめてください。もう友達ですよ。他人行儀は必要ありません。」
「ゆうちゃんって呼ばせていただきます!」
ゆうちゃん…。
「では、ゆう君で。」
すると、ゆう君は目をギュッと瞑って、震えた。
「なんか、ゆう君ってゾクゾクする。」
ゆう君は変態なんだと思った。