初めて彼氏ができた。
彼の名前はゆう君。
初めてゆう君と出会ったのは、喫茶店。
外見は赤レンガの壁で入り口付近には黄色い花と緑の葉が花壇に植えられていて、あまりお客が居ない物静かな店内にコーヒーの良い香りが広がっている喫茶店。
お店の名前はAngraecum(アングレカム)。
アングレカムというのは花の名前で、花言葉は、「いつまでもあなたと一緒」
その日はカウンター席の端に座り、カフェオレとチーズケーキを頼んだ。
カランカランと古びたドアのベルが鳴った。
入ってきたのは、スラッとしたモノトーンをオシャレに着こなす若いイケメンだった。
「お、素敵なお客様だね。」
とマスターが言った。
そのイケメンは私の隣に来て、
「お隣、いいですか?」
とたずねてきた。
「はい、私のお隣でいいならいいですよ。」
と私は答えた。
「コーヒーください。」
その人が注文した。
「貴女みたいな若い女性がレトロな喫茶店に来るなんて珍しいですよね。」
「レトロな店内に入った瞬間から漂うコーヒーの香りはたまりません。ここで1日中まったりするのが好きなんです。」
「奇遇ですね、僕もです。色々な喫茶店に行くのが趣味で、たまたまこの喫茶店を見つけてしまい、入らずにはいられませんでした。とても良い喫茶店ですね。」
その人はマスターに向かって丁寧な笑顔を見せた。
「店内や外見は妻のセンスですよ。メニューも妻がいたからこそあるのです。」
マスターはコーヒーをいれながらそう言って優しく微笑んだ。
「何だかほっこりします。」
と私が言うと、
「同意です。平和でいいですね。」
とその人が言った。
「マスター。私、今週来られそうに無いんです。私の事、忘れないでくださいよ。」
「はい、忘れませんよ。定番のカフェオレとチーズケーキ。」
マスターの微笑みがとても好きだ。
「マスターぁぁぁぁぁ。」
と私が言った。
「貴女は学生なんですか?」
とその人がたずねてきた。
「私は高校生です。見えませんか?」
「いいえ、20代にしては若すぎるけどお店のチョイスが大人びていたので少しばかり悩んでしまいました。僕の偏見で若い女性は有名なケーキ屋とかに行くものだと思っていました。」
礼儀正しいイケメンだ。
言葉使いも素晴らしい。
「私もイケメンに対する偏見で、イケメンは礼儀正しくないし言葉使いも荒いと思っていましたが、そんな事もありませんでした。」
と、私が冗談交じりに言った。
「それは良かったです。僕なんてイケメンと呼ばれるにはまだまだですよ。では、そろそろ帰りますね。ごちそうさまでした。ここのコーヒーは最高ですね。また、来ます。」
そう言って店を出ていった。
「じゃあ、私も帰ります。ごちそうさまでした。」
「はい、また来週。」
そう言ってマスターは手を振ってくれた。