駅に着くと、そこには白い帽子とワンピースをきて、駅員に柔らかい笑顔を浮かべる、中学生くらいの女の子がいた。
この時間は学校なのでは?と思ったけど、深くは考えないようにした。
女性は自分に近づいてくる僕を認め、駅員に向けていた柔らかい笑顔をそのまま僕に向けた。
「あなたが落とした方ですね?」
「はい、あの、どこで?」
「えっと、私が朝乗るために駅に入ったら、カードが落ちてて何かなぁ?と思ったら定期で……。これは大切なものだ!と思って。でも私急いでたので、今駅員さんに渡そうとしたんです。すると丁度探している人がいると言われて、丁度放課後だって言うんで折角なので待たせてもらいました」
「あの、わざわざありがとうございました」
「いえいえ」
「お礼がしたいんですが……」
「いえいえ大丈夫です」
「それだと僕の気がすみません!」
「んー、そうですねぇ。ならこの連絡先を渡すので、後日改めて……。お互い予定が噛み合えば、お茶でも飲みに行きましょう」
「はい!」
「それでは!」
そう言うと女の子はまた柔らかい笑顔を浮かべ、去っていった。

夜、「あの子可愛かったなぁ」とか思いつつ、今日あった事を思い出しながらぼーっとしてた。
すると着信音が鳴る。
ばっと勢いよく起き上がってディスプレイを見ると、二階堂からのメールだった。
なーんだ、あいつかと思いつつ、メールを開くと、
「お前今日ぱっとしなかったけどどうしたんだよ」
と書いてあった。
僕はそれに、
「二階堂、俺、凄いかも」
と書いて送った。
「はぁ?」
と来たけど。

いつまで経っても、女の子から来なかったけど、2週間してようやく来た。
「明日の土曜日、空いてますか?」
僕は目玉が飛び出るんじゃないかってくらい目をひん剥いて、喜びに浸った。
「もちろんですよー!!」
と書いて送った。

そして当日。
俺はそれなりの格好して、お礼だから菓子折りを持っていくことにした。
ああ言う女の子が好きな物は何かつかめなかったけど、クッキーにしておいた。
お茶をする喫茶店に着いて席に着くと、
「あの」
って言って菓子折りを渡した。
女の子は遠慮がちに
「え、そんな良さそうな……、良いのに」
と遠慮がちだったが、俺は、
「大丈夫ですから」
と言って半ば押し付ける感じで渡した。
いろんな話をしながらお茶を飲んだ。
何と、少し前に観た映画を彼女も観てて、お互い気に入ってた。
今やってるRPGも彼女は好きで、やりこんでいた。
彼女にますます親近感が湧いた。
時々話して共感した時に見せる柔らかい笑顔に、僕はハマっていった。

そして帰り際に思わず、
「また会えますか?」
と聞いていた。
彼女はまた柔らかく満面の笑みを浮かべながら、
「はい!」
と言ってくれた。
「あの、僕は海人!高一!君は?」
「伊集院聖歌(いじゅういんせいか)、14歳です!」