できる限り淡々と、感情を殺して吐き出した。
大事なことなんだ、隠しておけない。親に紹介された男性と会うなんてシバケンに申し訳ない。
シバケンは無表情で黙って話しを聞いているけれど、動きは完全に止まっていた。
「一度食事に行きました。あ、いえ、二人きりじゃないですよ。父と母も交えて四人でです」
シバケンの不安な顔に慌てて説明した。
「でもその食事は全然楽しくなかったです……苦痛なだけで」
「…………」
「好きじゃない人とご飯を食べたって美味しくない。目の前の男性はシバケンじゃないから」
「…………」
「そう言っても……それでも父はその人と私をくっつけたいって……」
「…………」
話しているうちに鼻の奥がつんと痛む。気を抜くと泣いてしまいそうだ。
「今朝その人がうちに来て、家にいるのが辛くなっちゃって……すみません、こんな話聞きたくないですよね」
言ってはいけないことだと分かっている。彼氏にする話ではない。ただ不安にさせるだけなのに。
シバケンはうつむく私には声をかけず、再びハンバーグを口に入れた。添えられたポテトもきれいに食べきると、お皿をテーブルの端に寄せた。
「今から実弥んちにご挨拶に行くよ」
「え?」
思わず顔を上げた。
「お父さんにちゃんとご挨拶するよ。実弥とお付き合いしてますって」
私を見つめる顔は真剣だ。その意志が固いものであるとはっきり感じた。
「でも……」
父に紹介するのは躊躇われる。私に「そんな男とは別れろ」と言ったのだ。シバケンの仕事と地位をバカにして、人の表面しか評価しない父にはシバケンの良さは理解できない。シバケンを傷つける結果になるだけだ。それは絶対に避けたい。
「あ、その前に風呂に入っていい?」
「え?」
真剣な顔から一転して思い出したように確認するシバケンに拍子抜けする。



