「仕事で油断して蹴られるなんてかっこ悪いでしょ。それにあのとき実弥ちゃんに……」

耳を赤くしてシバケンは口ごもった。

「か……」

「…………」

「柴田さん?」

「可愛いって……言ったことが……」

口を開いては閉じる、その困ったような表情に私まで動揺し始める。

「酔いすぎて申し訳ない……」

「いえ……」

「いや! でも可愛いって言ったのは酔ってたからじゃなくて……」

「えっ……」

自分の発言にシバケンの顔はどんどん真っ赤になる。

「俺ちょっと調子に乗った。あまりにも実弥ちゃんに会うから気が大きくなって……」

私は首を傾げた。

「どういう意味ですか?」

「偶然にしてはよく会うから嬉しくなっちゃって……」

私まで耳が赤くなっているような気がする。耳どころか頬も熱い。

「というか実弥ちゃんって気安く呼んですみません」

「いえ……」

「本当にすみません!」

今度は私に深々と頭を下げた。

「シバケ……柴田さん、頭を上げてください……」

もういい。シバケンを許そう。確かに傷ついたしがっかりしたけれど、度重なる偶然を嬉しく思ったのは私だけじゃないって分かったのだ。

「でも急に抱きしめるとか失礼だし申し訳なくて……職業的に……」

「それは……」

私も悩んだ。私の気持ち次第ではあの行為は犯罪になりかねない。

「それに、こんな人だと思わなかったって言われたから警察官のイメージを壊しちゃったかなって……」

猛烈に反省する姿に思わず私の口元が緩んだ。

「柴田さんはお仕事が嫌いですか?」

「え?」

「大変なお仕事だと思います。強い志があって就いた仕事ではないかもしれませんが辛いですか? 嫌いですか?」

私の質問にシバケンは考え込んだ。