PMに恋したら

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同期であるレストラン事業部の優菜と久々に飲むことになった火曜日の夜。
古明橋駅前の居酒屋に二人で入った。各テーブルの間を簾で区切られた店内はほぼ満席に近かった。一際賑やかな男性数人の隣のテーブルに案内され、居心地の悪そうな席に運が悪いなと思いながらも優菜と向かい合って座った。

「優ちゃんから誘ってくれるなんて珍しいね」

おしぼりで手を拭きながら優菜に言った。

「最近ストレス溜まってるんだよ。ほんと転職したい……」

不機嫌に言った優菜は店員が生ビールをテーブルに置いてすぐにグラスを持つと、一方的に「乾杯」と言ってぐびぐびと飲んだ。

「熊田がさぁ、ぜんっぜん頼りにならなくて書類仕事もアルバイトの教育も私に任せっきりなの!」

優菜は早峰フーズの持つイタリアンレストランの副店長をしている。店長である熊田先輩の方針にも納得できず、アルバイトの要望にも応えきれないことにプレッシャーを感じているようだ。熊田さんのことを陰で呼び捨てにするほどにはストレスを溜めている。優菜の店舗はレストラン事業部の中でも売り上げが低かった。
転職したいのは私も同じだ。今更警察官を目指そうとは思わない。けれど今とは違うやり甲斐のある仕事がしたかった。

「私も転職したいな……」

「実弥も?」

「うん……転職しないにしても部署を替えたいよ……」

その瞬間隣のテーブルから驚くほど大きな歓声が上がった。簾で隠れて様子は分からないが、盛り上がっていることは確かだ。優菜と目が合い「うるさいね」と声を出さずに会話をした。

「彼氏もほしいな……休日はデートしたい。はりと潤いのある生活がしたいよ」

そう呟く優菜に「私も」と答える。