一台のパトカーの前には二台の乗用車が停まっていた。後ろの白い車のヘッドライトが割れており、前の黒い軽自動車の後部ははっきり分かるほどにへこんでいた。追突事故でも起こったのだろうか。
パトカーの横を通ると中には一人の警察官が無線で何かを喋っていた。パトカーの前にはもう一人の警察官がドライバー二人から事情を聞いているようだ。その警察官を見て胸が高鳴った。バインダーを持ちながら立つ警察官は間違いなくシバケンだったのだ。
仕事中だからと声をかけたい気持ちを抑えて横を通ると、シバケンは私に気がついたのか話ながら軽く微笑んで会釈してくれた。それだけで舞い上がった私もシバケンに頭を下げると、スキップしそうなほど軽快な足取りで郵便局に向かった。
切手を買った帰りも同じく事故現場の前を通ると、シバケンは赤灯を振りながら交通整理をしていた。今度は私に気づくことなく、記憶にあるまま変わらず真剣な顔で仕事をしていた。
仕事中のシバケンを見ることができて上機嫌だった。私より頭一つ分背が高い彼は、筋肉のついた体形であることが制服の上からでも分かる。警察官だからきっと柔道か剣道で鍛えているのだろう。
もっと彼のことが知りたい。どうやったら距離が縮まるのだろう。以前のように交番に通わなければいけないのだろうか。けれど彼は今交番勤務ではなくパトカーに乗っている。しかも女子高生のときならまだしも、いい年した大人が警察官に会いに行くなんてストーカーだと思われても仕方がない。嫌われることはしたくない。いくら警察が好きでもシバケンに逮捕されるなんてお粗末な結末だけは避けたかった。



