PMに恋したら


「強気でいいんですからね」

「え?」

「面倒な仕事や雑用を押し付けられても、それを受け入れるか拒否するかは黒井さんが決めていいんですよ」

「…………」

「理不尽なことやおかしいと思ったことは即部長にチクッちゃってください」

「はい……そうですね……」

北川さんは私に向かって微笑んだ。

「頑張ってくださいね。お世話になりました」

そう言って北川さんは同僚に見送られて退社していった。

私は総務部長にラミネートフィルムの件を話すと予想通り「自分で発注しろと言え」と言われた。受話器を取りレストラン事業部の今江さんに内線してやんわりと部長からの言葉を伝え、思わず「すみません」と謝ってしまった。私は何も悪くないのに自然と謝罪の言葉が出てしまう。やはり私はこの仕事には向いていない。










「丹羽、切手がなくなったのか?」

「あ、すみません、買い忘れてました」

部長が壁際の棚に置かれたレターケースを漁りながら丹羽さんに話す言葉を聞いた私は素早く「買いに行ってきます」と立ち上がった。

「え、黒井さんが行ってくれるの?」

「はい。少し外の空気を吸いたかったので行きたいです」

慣れない業務に頭が混乱してきていた。それに最近妊娠していることが分かった丹羽さんを無理に外出させたくなかった。

「じゃあお願いね」

「はい。いってきます」





郵便局は早峰フーズの前の道路沿いを歩いて数分のところにある。今はもう少しでお昼になるから人通りも多かった。
信号を渡った先にパトカーが停まっているのが見えてきた。もしかしたらシバケンが乗っているパトカーではないかと期待して自然と足が速くなる。