「こんばんは。お邪魔いたします」
リビングに入って挨拶をすると父は仕事明けのシバケンを労うこともしない。シバケンももう父のことを分かってきたのか気分を害した様子はなく笑顔だった。
通り魔事件で活躍したエピソードを父に聞かせるうちに、シバケンと父の話は盛り上がっていった。同じ仕事の話でも、父の会社の話と警察の仕事の話では興味が全然違い、私も母も楽しめる食事だった。
トイレに立った父が戻ってくると手にはワインのボトルを持っていた。
「柴田君、君も一緒に飲もう」
「ちょっとお父さん、シバケンは車で来てるんだから……」
「いいじゃないか。泊まっていけばいい」
「はい!?」
「明日は休みなんだろう? なら飲んでも平気だな。今夜は泊まっていけばいい」
シバケンの許可も取らずに父はグラスに並々とワインを注いだ。
「どうしよう」と口にはせずに目で聞いてきたシバケンに「私に言われても困る」と目で合図を返した。泊まることは構わないのだけれど、問題はシバケンがお酒にそんなに強くないことだった。まだ付き合う前に居酒屋で会った時もお酒が入っていたから私を強引に抱きしめたのだ。
「さあ乾杯だ」
気を良くした父は一方的にグラスをぶつけ飲み始めた。仕方がないと頷いて合図するとシバケンも渋々ワインに口をつけた。そこからはあっという間にボトルが空になり、父もシバケンも面倒くさいほどに酔っ払った。
「そんなんじゃ実弥と一緒に住むことは許せん!」
「ちゃんと守れますから!」
「親に向かって何だのその口は!」
「まだ親じゃないって! なんなら今すぐ入籍を認めてください!」
「巡査部長ごときに娘はやれん!」
「これからもっと出世しますから!」
怒鳴り合いにうんざりした私は勝手にテレビのチャンネルを替えてドラマを見始めた。



