PMに恋したら


父は事故以来完全に自分の足だけで歩くことが困難になってしまった。リハビリをすれば杖一本で今よりも楽に歩くことは可能になるかもしれないけれど、時間がかかることだった。
現在家の中ではほとんど這うか片足で移動し、外では車椅子で移動していた。会社までは毎日母が車で送迎し、社内では社員の協力を得ながら車椅子で仕事をしているようだ。
思ったほど介助の必要がないことに母も私も父本人も安堵していた。気をつけることといえば階段と入浴くらいだ。

「柴田君は何時に来るんだった?」

「7時だよ。念のため寝ちゃってないか確認してみるけど」

今夜はシバケンが我が家に夕食を食べに来る。非番の日だから来る前に仮眠を取ると言っていた。そのまま熟睡していないかどうか心配ではあった。やっと父がシバケンと付き合うことを認めてくれたのだ。疲れて寝てしまうのは仕方がないことではあるけれど、今は父の機嫌を損ねたくはない。

父は私の交際相手として坂崎さんにはもう未練はないようだ。部下だから付き合いはあるのだろうけど、坂崎さんが我が家に来ることはもちろんなくなって、私が会うことはもうなくなった。

『あと20分くらいで着くから』

そうLINEがあったことを父と母に伝え、リビングの掃除は完璧か、料理や食器は揃っているかを母以上に確認した。

玄関のチャイムが鳴り、ドアを開けると箱を持ったシバケンが立っていた。

「お疲れ様」

「はぁ……やっとこの日がきた」

シバケンの溜め息の理由が分かって笑ってしまう。今夜は同棲する挨拶を兼ねた食事会だ。

母はご機嫌だ。もともと坂崎さんよりもシバケンの方が私にお似合いだと思っていた母はシバケンがお気に入りだ。健人くんなんて呼んで未来の息子を可愛がっている。