思ったより早く異動が決まったけれど、私の後任は既に見つかっていた。代わりはいくらでもいるのだと思い知らされて気持ちが沈んだけれど、ならば尚更私にしかできないことを新しい部署で探していきたい。
メールを閉じる前に退職者の名前をもう一度確認した。
『レストラン事業部 店舗管理課 小橋優菜 12月10日付で退職』
事前に知ってはいても寂しさを覚えた。
あれほど転職したいと言っていた優菜は、高木さんと付き合い始めたと思ったらあっさりと結婚を決めて寿退社することにしたようだ。付き合い始めてから結婚までが早すぎて驚いた。
高木さんと付き合うことにしたと聞いて、その次に会った時にはもう結婚するのだと嬉しそうに報告された。同期の中で誰よりも仲が良かった友人は、同期で一番早く結婚して辞めていく。嬉しいはずなのに寂しい。優菜の結婚相手はシバケンの同期でパトカーに乗る相方だ。全く関係がなくなるわけではないけれど、私がレストラン事業部に異動したら一緒に働くはずだったのだから今は寂しさの方が勝った。
引継ぎを円滑に行うために資料をまとめ、定時になると早々に会社を出た。早足で家の前に着くとちょうど母の運転する車がガレージに停車した。
「ああ実弥おかえり。手伝ってよ」
「えー、仕方ないな」
口では文句を言いつつも母を手伝うために助手席側に回った。ドアを開け、中にいる父に手を伸ばした。
「お父さん、おかえりなさい」
「ただいま」
松葉杖を地面につけた父は腕に力を入れて腰を車内から外へ向け、松葉杖を支えに足を地面につけた。よろけることのないように私が父の体を支え、玄関まで父の横について一緒に歩いた。



