「本気の対応……ですか」
シバケンは突き出した花束を下ろすと「これ以上実弥に付きまとうなら、こちらも法的な対処を取らせていただきます。それが本気の対応です」とはっきり告げた。ぴくりと坂崎さんの眉が動いた。シバケンは法律の知識と仕事を利用して坂崎さんを処罰してしまいそうだ。ほとんど脅しの冗談だろうけど、これは坂崎さんには効いたようだ。
「専務の希望とはいえ、警察沙汰は僕も望みませんね……」
「ならばお引き取りください。実弥に二度と近づかないでいただきたいです」
坂崎さんは溜め息をつくと目を閉じ何かを考えているような様子になる。そうして目を開け「実弥さんに僕の思いが伝わらなくて残念です」と言った。口をキュッと結んだかと思うとフルーツが入ったバスケットを私に差し出した。
「専務によろしくお伝えください。どうやら家族になるには縁がなかったようです、と」
「坂崎さん……」
バスケットを受け取りながら態度が急変したことに戸惑った。
「では失礼します」
冷酷な表情のまま、意外にもあっさりと私たちに背を向けてロビーの方へと行ってしまった。きっと彼も強引なやり方をしている自覚があるからシバケンの簡単な脅しに手を引いたのかもしれない。
「ふうー……感じの悪い男だな」
「ありがとうシバケン」
シバケンと向き合うとお礼を言った。
「こんなのどうってことないよ。実弥を守るのは当たり前でしょ」
「当たり前のことじゃない。なかなかできないよ。こんなヒーローは絶対にいない」
シバケンは照れて笑った。
「ごめんね。結構やばそうな男だって知らなかった。実弥の悩みとか話をちゃんと聞いてあげなかった」
「シバケンがそばにいてくれるだけでいいの」
「ちゃんと考えてるから。実弥の生活も、俺らの未来も」
真面目な顔になると私を見つめた。
「実弥を守るって言ったことは嘘じゃないし、見栄を張って言った言葉じゃない。一生かけて守るよ」
「嬉しい。なんだかプロポーズみたい……なんてね」



