囁かれた言葉に背筋が凍る。どこまでも支配しようとするこの人の考えが恐ろしくてぞっとする。そして私をバカにした態度に腹が立った。
怒りを込めて坂崎さんの肩を押し距離をとると、私を見る彼の顔は見たことがないほど冷たかった。眉間には若干のしわが寄り、目は細く口はへの字になっている。整った顔だからこそ、本性を出した顔は性格の冷酷さを表す。
けれど私はもう負けない。
「生活が苦しくてあなたに頼るくらいなら一家で心中します!」
そう言い切ったとき「はいそこまで!」と声が割り込み、私と坂崎さんの間が花で遮られた。
「心中なんて俺がさせません」
いつの間にかすぐそばにはシバケンが立っていた。持っている花束を剣のように私と坂崎さんの間に突き出し、それ以上お互いが近づかないように壁を作った。その顔は真っ直ぐ坂崎さんを睨みつけている。
「シバケン……」
彼が来てくれた。それだけで私の不安や恐怖や怒りは吹き飛んだ。
「俺なら実弥の全部を受け入れて支えることができます」
「へぇ、君が?」
坂崎さんはシバケンにバカにした声を向けた。
「警察官はそれほど収入があるお仕事なんですね」
「公務員舐めんなよ」
負けじとシバケンも強気だ。
「実弥と実弥の家族も丸ごと全部俺が支えてやる。実弥との未来の家族まで養うだけの収入は俺にだってありますから」
力強く言い切った。それはどこまで真実かわからない。虚勢を張っただけかもしれないし、本当に金銭的に私と家族の未来を支えることができそうでもあった。
「僕はお父様の推す男ですよ。それでもあなたは出しゃばってくるのですか?」
「実弥本人が望んでいない。それでもあなたが出しゃばってくるのならこちらもそれなりに本気の対応をさせていただきます」



