PMに恋したら


優菜に抱きつく高木さんの画像も拡散されてしまい、上司からきついお叱りを受けたそうだ。身を挺して一般市民を庇うように見えなくもないことと、高木さんと優菜の顔は写っていない角度だったことから大事にはされなかった。
最初に刺された男性は命に別状はなく、逮捕された男は過去の傷害事件も認めたため、古明橋連続通り魔事件は解決した。

けれど社内では私と優菜がその場にいたことが知れ渡ってしまい、数日間注目を浴び続け仕事がやりにくい状態になった。
優菜は高木さんのことをからかわれるようになったため私の方がまだ楽かもしれないが、優菜はむしろ高木さんを誇りに思っているようで、からかわれることが嬉しそうだ。

後日優菜と高木さんが正式に付き合うことになったと聞いたときは驚かなかった。他部署の人にまで触れ回って惚気る優菜は幸せそうだ。



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「お母さんそろそろ帰って。病室には私がいるから」

「そう? じゃあ帰ってご飯作ってるね」

西日が差し込む病室のカーテンを閉め、母を見送った。
仕事の遅れを取り戻そうと一晩中起きていた父は今やっと眠ったところだ。
来週退院することが決まったものの職場に復帰するかどうかは未定だった。これからの生活をどうするかの話はまだ進んでいない。母は私も働きに出ようかしらと言っている。

父が寝息をたてたのを確認してから売店に飲み物を買いに行こうと病室を出ると、「こんにちは」とドアの前で声をかけられた。
声の主を見て私は目を見開いた。メロンやオレンジなどの果物が入ったバスケットを抱えた坂崎さんが病室の前に立っていた。
久しぶりに会った坂崎さんは作り笑顔で「専務は起きていますか?」と問いかけた。