PMに恋したら


父は選択を間違ったのだ。あのときあそこに来なければ、今私はこんなに絶望していない。まるで全て父が悪いかのように被害者である父を責めた。

「それは違うよ」

シバケンはきっぱりと言い切った。

「お父さんは大怪我をした。けれどその場では何も悪いことはしてないよ。ただ歩いていただけなんだ」

静かな言葉に恥ずかしさがこみ上げる。今も病室で眠る父を責める自分が恥ずかしい。

「確かにお父さんは実弥に酷いことをしようとしていたかもしれない。でも被害者は何も悪くない。事故を起こした運転手が一番悪いんだ。スマホを見ながらの運転は危険行為なんだから」

「うん……そうだね……」

涙が溢れ声が震えた。

「悔しいね。不安だよね」

「うっ……」

嗚咽で言葉にならない。父の容体が不安で堪らない。この先の生活が不安で押しつぶされそう。怪我をさせた運転手が憎い。優しい言葉をかけてくれるシバケンが愛しい。様々な感情が巡って涙が止まらない。

「会いたいよぉ……」

気持ちが口から出てしまった。今シバケンに会って抱きしめてもらいたい。

「……俺も。実弥に会いたい」

この言葉を最後に会話が途切れた。私が落ち着くのを待ってくれているようだ。

「実弥ごめん、もう切らなきゃ」

「え?」

「まだ仕事中なんだ。今ちょっと抜け出して電話してるとこ。お父さんが心配だったから」

「そうだったんだ。ごめんね、ありがとう。私は大丈夫だから」

もう少しシバケンの声を聞いていたい。けれどその思いを言うことはできない。仕事中のシバケンを必要とする人は私以外にも大勢いる。

「明日会いたい。非番でしょ?」

「ごめん、当直明けでも仕事なんだ。古明祭りの警備がある」

「ああ、そうか……」

毎年古明祭りは大規模だ。当然警察官は警備に当たる。