「社長、私たち別れましょう。

やっぱり、社長と社員が付き合うなんてよくないと思うんです。

短い間でしたけど、社長と付き合えて夢みたいで…幸せでした。
ほんとに、愛してくれてありがとうございました。

明日からは、一社員としてよろしくお願いします」



そう言って私は、社長から貰った合鍵をテーブルの上に置き

荷物を手にして逃げるかのように部屋を後にした。



早くあの場所から逃げないと、泣いてしまう。


泣き顔見られたら、私が言ったことなんて説得力なんてない。

もしくは、何こいつ?別れを告げたくせに何泣いてんの?って思われるかもしれない。



いや、そう思われた方がよかったかも。


いっそのこと、嫌われた方がよかったかも。

なんて、歩きながら考えていた。


すると、いきなり後ろから



「待って、智美」


と、社長の声が聞こえた。

うそ、追いかけてきた…の?



振り向きたくないから、振り向いたら終わりだと思うから


振り向かないまま、「離してください」と言うしかできなかった。