それから、私は残していた仕事を片付けて聖さんの家へと向かった。


きっと聖さんは、20時には帰ってくる。



ご飯を作っとくべき?とも思ったけど、これから別れを告げるのにご飯作ったらおかしい気がして作らないでいた。



「 はぁ…。別れたくないな」


なんて言ったところで、別れないで済むわけないんだけれど。



ずっと考え込んでいると、聖さんが帰ってきたようだ。



「ただいま」


「あ、お帰りなさい…」



「智美、今日の夜ご飯なに?」



やっぱり、作っとくべきだった。


最後だから、尚更作っとくべきだったかも。

聖さんだって、疲れて帰ってきてるのに…。



「えっと、作ってないです」


「ん?あ、外食したい?」



きっと聖さんは、今から私が別れを告げることを気づいていない。


聖さん、ごめんなさい…。



「社長、私…」

「んー?どうしたぁ?

ってか、社長ってなに?聖!だろ?」


私がなんで、敢えて社長と言ったのか。


割り切るために、あえて社長と言ったのだ。


そして私は、言いたくない言葉を口にした。