聡から脅されて、数日が過ぎた。


残り僅かの時間、聖さんと一緒にいたくて

いつもじゃ有り得ないくらい甘えてると思う。



そんな私がおかしいなんて、もうとっくに気づいてるはずなのに

何も聞いてこないのは、聖さんなりの優しさなのかもしれない。



こんなことなら、聖さんと知り合うんじゃなかった。なんて考えたこともあったっけ。


だけど、そんな否定的なことを思った自分に、すぐ後悔した。



「……さん!……きさん!深崎さんってば!」


「え?あ、すいません。

ボーッとしちゃってて…」



仕事中にも関わらず、ボーッとするなんて

本当に気が狂いそうだ。



「どうしたの?

仕事中にボーッとするなんて、珍しくない?」


「あ、いや。なんでもないんです」



私の言葉に、納得いかなそうな心配そうな顔をする橘先輩。


先輩になら、相談できるかも!なんて思ったけれど

言えるはずもなかった。



「……そう?ならいいんだけど」


「はい、心配かけてすいません」



私は、一礼をして仕事に戻った。


「あっ!忘れてた!!

これ、深崎さん出るよね?」



ん?あ、もうこんな時期か。



橘先輩が見せた紙は、毎年恒例の事務課の人たちだけでの飲み会。


年に2回ほどある。



コミュニケーションも必要だと、部長が始めたのだった。


私は、こういうの苦手だから1回しか出たことなかったけど。



「すいません、私はパスで…」


「えぇ〜?今年もー?

深崎さんって、いつも不参加だよね」



なんてブツブツ言いながら、仕事に戻っていく橘先輩。


毎年出ないと、変に思われるかな。



とも考えたが、別に友達を作りに来たわけでもない。

仕事をしに来てるんだから、周りからどう思われようと気にもならなかった。