「社長、紫苑が専属秘書で大丈夫ですか?」


「あぁ、よくやってくれている」



社長は、私の目を見ないで答えた。


何か、イライラしてるようにも見えるけど

気のせいだろうか。



「そうですか、それならいいんですが」



「深崎、お前はもう事務課に戻れ」



そう言われてしまった。


やっぱ、怒ってるように言われた気がする。



私はそれに不安が出てきて、戻れと言われたのに動くことができない。


動かない私を見て、もう一度社長は


「聞こえなかったか?

早く業務に戻れと言ってるんだ」



次は気がするとかじゃなくて、本当に怒った口調で言われた。



私は、それが恐くて不安で悲しくて

「はい」と言って、その場から逃げるように社長室を後にしたのだった。



どうして社長は、いきなり怒り出したのかさっぱりわからなかった。



「嫌われちゃった、かな」


なんてポツリとつぶやいたって、誰も返してくれるわけない。


私は兎に角、事務課に戻り自分の仕事に取り掛かった。



だけど、集中できるわけもなく

度々小さいミスが多かった。